世界に恋をしたいから、

好きなものをゆるりと留めておくブログ。

初めて読んだ小説の話をしようかー恋を知らない君に寄せて

 

生まれて初めて読んだ「小説」の記憶がある私です。

 

ちょうど小2の時だった。

小1の時に、幼馴染の間で土曜8時にやってた「白鳥麗子でございます!」が流行って、その枠のドラマを見始めた。*1

小2になる直前の、2月から3月にオンエアされたのが「時をかける少女」だった。内田有紀版。

薄く透明なラベンダー色を効果的に使った演出が子ども心に好きだった。それと、エンディングで流れるNOKKOの「人魚」の切なさ。

 

深町くん役の袴田吉彦よりも、吾郎役の河合我聞のが好きだった。いや、それでも深町くんはかっこよくて、未来人ぽい得体の知れなさがあったと記憶はしてるんだけどさ。

今考えると、内田有紀がお姉ちゃんで、妹が安室奈美恵の姉妹とか美人すぎるだろ!っていうくらい、キャストが豪華だった。音楽も久石譲だしね。

 

全5話、すごく夢中で見てた。

多分ラスト?だと思うんだけど、大人になった和子*2が、ふと深町くんのことを思い出すシーンとか、原作者の筒井康隆が住職役で出てて、箒でどっかはきながら、坂道?かなんかを走る和子をあたたかく見守ってたのとかすごく覚えてる。

 

終わってからも時をかける少女の話をずっとしてた。タイムリープできると思ってた。それくらい好きだった。ラベンダーの匂いとか、ラベンダー色の光を思うとあったかい気持ちになるんだ。今でも、だけど。

 

そんな私に、父が「ドラマの原作がうちにあるからそんなに言うなら読んでみるか?」って差し出してくれたのが、筒井康隆全集に入ってる「時をかける少女」だった。

父の書棚は、仕事で使う本とかがたくさんあるんだけど、そこに混ざって綺麗な箱に入ってる筒井康隆全集があった。その中の「時をかける少女」って背に書いてある巻を背伸びして取り出した時のドキドキは忘れない。恭しく箱カバーを外して、少し色が変わったページをめくった時に、少し大人になった気がした。国語の教科書でも、普段読んでる児童文学でもない「小説」としてのたたずまいにうっとりした。

 

小学二年生にしては、たくさんの漢字を既に読めた(書けないけど)私は、夢中でページをめくった。ドラマで見た、淡いラベンダー色が文字から透けて見えた。本当に美しくて切なくて面白い話だと思って、繰り返し繰り返し読んだ。それまでだって読書は好きだったし、対象年齢が高めの本も読んでたけど、きちんと小説の体をなしている本を読んだのは「時をかける少女」が初めてだったんだ。

 

そしてそれから、小説を特に好んで読むようになって、今に至ってる。

 

だから今回、時をかける少女が土曜日の夜に全5回でやるって聞いてすごくドキドキしたし、嬉しかった。

7歳の私が夢中になったものを、29歳の私が見るんだよ。すごいよね。本の力ってすごい。7歳の私はただただ本が面白い!って思うだけだったけど、29歳の私はどうせなら仕事でこんなにも人を夢中にさせる、魅力あるものを作りたいとすら思ってしまう。そうは簡単にいかないのはわかってるけど、それを成し遂げて何度もメディアミックスされてる時かけすごい。編集さんも筒井さんも凄い。

 

そう思って、第一回の前に改めて原作を読んでみた。筒井康隆全集じゃなくて、Kindleで。あの頃の私からしたら、今の私の読書習慣なんて未来人のそれなんだろうな、なんて思いながら。

小説とはいえ、掲載誌が中3・高1向けの教材だから「ジュブナイル」って言ったらジュブナイルなんだと思う。言葉だって連載当時の若者言葉で、ある意味古めかしい。書籍として出版された年を見て考えると、多分うちの父はちょうど中3とか高1の時にこの話に出会ったんだろうなって思う。それを小2やそこらの娘に読ませるなんて、だいぶクレイジーだし娘の読解力を過大評価してる気がする笑。

 

そんなふうに脱線しながら読んだ。22年前と同じように、やっぱりきれいなラベンダー色が頭に浮かんで、たまらなく切なかった。どんなドラマになるんだろう、私はちゃんと受け入れられるのかな、なんてことも思った。

 

 

そして今日。最終回。

予定があってリアタイできなかったから、帰ってきてから見たんだけど、本当に泣いた。

夏を知らない君で、恋を知らない君。

どうか、どうか、優しすぎるあの三人が、私たちの見れない物語のその先で、ふと思い出した時にぎゅっと切なくなるような思いを抱えて、でも、それぞれの道ですごくすごく幸せでいてほしいって思った。未来人って未羽にバレてからの翔平が声とか喋り方を絶妙に変えてるのがよかった。風磨くん演技上手くなった、って思った。そしてなにより、最後に流れる「恋を知らない君へ」はずるかった。すごくすごく、胸を締め付けられた。あんなに美しい言葉の歌詞で、四人が切なく歌うなんてずるい。ってか今のタイミングで朗読聞かせてほしい!ってなって泣いた。

 

 

あと、個人的な思い出とリンクすることに気づいてまた切なくなって、時かけが好きだなって思って、もっと泣いた。

 

私も夏を知らなかった。

私も恋を知らなかった。

そして、小説を知らなかった。

 

初めて本当に恋をしたのは夏だった。暑いだけじゃない夏を知った。小説を読んでから四年後の話。小学校最後の夏。

 

何度も何度も繰り返し読んでいる、今まで読んだ小説の中で一番大好きって言っても過言ではない小説の「流しの下の骨」*3に出会ったのはその次の夏。初めての恋人と平らかに付き合う主人公に憧れた。そして、その主人公の恋人ー背が高くて、穏やかで、スキーが得意な大学生ーの名前は「深町」くんだった。

 

偶然だろうけど。

 

 

私は和子でも、未羽でもないから、タイムリープなんてできない。でも、こうやって記憶の海を漂って弄って、思い出したり気付くことはたくさんある。幸せな気持ちになることも、切なくなることも。

7つの時と変わってないところもあるし、変わったところももちろんたくさんあるけど、きっと初めて「時をかける少女」という物語を読んだ時と変わらず、これからも小説を読む時はドキドキするんだろう。ラベンダーの匂いや色に無条件にキュンキュンするんだろう。

 

それくらい、人に影響を与える物語を原作としたドラマに好きな人たちが関われてよかった。

見れてよかった。

 

私を形作る根幹にあるものの一つを、時を経て原体験させてくれてありがとう。

 

っていうめっちゃエモいブログを書くくらいには泣いた、っていうオタクの話でした。長々とさーせんw

 

 

 

 

 

*1:通学路でずっと「おーっほほほほほほほ」をやる小1女子の集団ってなかなかうざい

*2:原作と同じく和子が主人公。メディアミックスされるたびに主人公の名前変わるのどうなのよっておもってる笑

*3:江國香織さんの小説。名作です。タイトルはともかく、普通に女の子の話